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私は傍で見守るだけだった…。
サハリンIIフェーズ2プロジェクトの今



 昨日、私は、札幌のホテルニューオータニで行われた「サハリンIIフェー
ズ2プロジェクトに係わる環境問題フォーラム」に出席した。だが、発言は…。


 *サハリンプロジェクトが良く分からない方は
  先ずコチラから、どうぞ
  http://www.unlimit517.co.jp/ana58.htm


【"フォーラム"は有意義だったのか?】

 今回のフォーラムは、国際協力銀行(JBIC)の主催で行われた。出席者は、ス
テークホルダーと呼ばれる利害関係者が主で、北海道内の漁業団体や環境保護
団体の関係者ら、40人ほどであった。

 もちろん、事業主体であるサハリンエナジー社(SEIC)の担当者も出席した。

 早い話が・・・

 国際協力銀行(JBIC)が、このプロジェクトに対して、金を出すかどうかを決
めるのに、意見を聞くというのが、このフォーラムの趣旨。しかし、2回出席
して見て感じるのは、「融資は既に決まっている」という雰囲気。

 米国産の牛肉同様、「仕方がないから、貴方達の意見も聞こうか」という態
度である。これを既成事実にして、どんどんプロジェクトを先に進めようとい
うのが、彼らの本音であろう。

 「自然を守るって、言ったって、寒かったら、あんたら生きていけるの?」

 というような大上段に構えたような感じを、私は、彼らから受け取る。

 私以上に憤りを感じているのは、全9回のフォーラムに参加し、積極的に、
発言をし、「貴重な自然を絶対に守る」という使命感に燃えて、日々、活動さ
れている国際環境NGO・FoE Japan(Friends of the Earth Japan)の村上正子氏。

 彼女から届いた文章がここにある。
───────────────────────────────────
■過去9回のフォーラムを通じて改善されたこと(JBICによる説明)
───────────────────────────────────
 油流出事故関連では、「原油タンカーのダブルハル完全対応」「検船」
 「アイスナビゲーターの乗船」「砕氷船での先導」など。

 油流出対応計画は現在作成中。昨年6月からオホーツク沿岸で説明会を5回
 開催し、意見を聞きながら作成。日本側の対応については北海道の緊急対応
 策の策定のための油流出専門家会合が開かれる。

 オオワシに対する保護に関しては「保護・モニタリングプランの策定」
 「ロシア専門家による基礎調査」「パイプラインルートの再変更」
 「ヘリコプターの活動の制限」「オオワシを含む希少種へのモニタリング
 体制」「保護計画はよりよいものにするよう改定していく」など。
  
 生態系に対する環境緩和策を目的とするBiodiversity Action Plan(BAP)
 の策定を計画。
───────────────────────────────────
■検証レポートに対する評価(JBICによる説明)
───────────────────────────────────
 日本の野生生物研究者から上げられた「検証レポート」に関して、基本的に
 データの不備、妥当性、不足という指摘が多かった。

 SEICとして、EIAや行動計画(アクションプラン)に公表している以外の非公
 開データがある。
───────────────────────────────────
 *EIA(Enviroment Impact Assessment) = 『環境影響評価』のこと
───────────────────────────────────
 Biodiversity Action Plan(BAP)を策定する予定。スコープは生態系に与え
 る影響を勘案し、対応策を検討。公平性を保つために、第3者機関を選定。
───────────────────────────────────
■油流出関連(SEICによる説明)
───────────────────────────────────
 海上災害防止センターが北海道における研究を主催する意思があるというこ
 とで、最大限のサポート、情報の提供をする予定。砕氷船による先導を行う。

 タグボート常時待機。地元の人とセンシティブマッピングをつめていく必要。

 5月に予定されていた訓練でのヘリコプター事故は残念だったが、その対応
 は迅速だった。
───────────────────────────────────
(JBICによる説明)
───────────────────────────────────
 油流出対応計画に関して、アデンダム(最初に出したEIAの改訂版)で概要を
 公開し、日本語に翻訳。不十分だという意見もあるが、現時点において可能
 なことは、やっている。
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■JBICの審査について
───────────────────────────────────
 最終的に判断したわけではない。コンサルタントの知見を参考にしながら、
 他のレンダー(融資を行う金融機関)と共同で独立した審査を進めている。

 現地調査について、安全上の理由もあるので、SEICの現場の人やコンサルタ
 ントと一緒に見る。抜き打ち的にやることもある。

 環境に対する影響を最低限にしなくてはならないが、プロジェクトはロシア
 政府の許認可で実施されており、止められる立場にない。

 EIAアデンダムの中で影響を少なくするよう対応。EIAのアデンダム、コミッ
 ト、日本語での対応などと進歩した。評価していいのではないか。
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■参加者からの主な意見
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・JBICは、独立して、検討すべきなのに、SEICがいかに環境影響を緩和してい
 るかを代弁している。
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・JBICとして、国のエネルギー政策と別の立場で環境審査をするべき。経済産
 業省も、国のエネルギー戦略から独立した形で、JBICは環境審査するといっ
 ている。
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・IUCNの独立専門家チームの勧告反映されず。SEICは、事実をゆがめて公表。
───────────────────────────────────
・河川横断独立モニタリングレポートが改ざんされている。SEICの行為は、
 信頼できない。
───────────────────────────────────
・JBICは、「これまで挙げられた意見は全部SEICに伝えた。その結果がEIAア
 デンダム」という回答。これでは納得させる回答ではない。これまでフォー
 ラムで出た質問を整理し、それに対して何をどう伝えたのか、どういう回答
 を得たのか、アデンダムのどこに反映されたのか、十分であるのかどうかを
 はっきり示し、文章をもって公開してほしい。それをもとに議論するべき。
───────────────────────────────────
・JBICが、今後、現地に行くときどういう場所、いつ見るのかを公表するべき。
 現地のNGOや問題を指摘している人とも回るべき。
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・チャイボでの工事の影響に関して、日本の専門家の考えを聞かず、SEICや
 ロシアの専門家の意見だけをもとにJBICは判断していいのか。
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・緊急事態に対応するかというのも大事だが、油流出事故を起こさせないこと
 が重要。
───────────────────────────────────
・独立性を保ち、事業者側やNGOなどとのギャップを解消するのがJBICの仕事。
 JBICがコンサルタントを選ぶにあたっても、NGOと共同で選ぶとか、ロシア
 や日本のNGOと一緒に現地をみるなどするべきでは?
───────────────────────────────────
・日本国民を代表して、判断してほしい。融資審査を停止するべき。
───────────────────────────────────
・融資していいのか我々に納得させるのもJBICの仕事。JBICの中で納得してい
 てもダメで、こういう油流出対応計画が出ているというものを提示してほし
 い。現状では日本国民として、いいとはいえない。
───────────────────────────────────
・問題があるということで議論が繰り返されてきている。こうしている間にも
 工事が進んでいる。融資をしないという結論が出されたときにはすでにほと
 んど終わって規制事実ができている。一度壊された自然を戻すのはむずかし
 い。この責任をJBICに押し付ける気はないが、それについてどのように考え
 ているのか。
───────────────────────────────────
・環境審査はいつ終了するのか。75%終了している。工事が全部終わった時点
 で環境審査NOというのは遅すぎる。JBICがEIA,アデンダムその他のSEICがと
 っている対策に対して、どういう判断をしたのか、どのように改善されたの
 か知りたい。審査中ということでマスクされている。
───────────────────────────────────
・工事が始まる前に慎重に時間をかけて行うのはいいが、判断をいつまでも引
 き伸ばしている状況は環境影響評価という手続きからみれば非常におかしい。
 審査なり判断という結論をだして条件をつけるということを明示した形で進
 めるべきではないか。BAPがあるのでいいという発言もあるが、基本的なこ
 とを守らないで、先へ事業を進めている。
───────────────────────────────────
・すでに工事75%終了。補遺版が出たのは60%終了してから。補遺版は作成さ
 れたが、現場での環境影響は回避されなかった。日本の保護種である鳥類に
 関しては、むしろ状況は悪化した。国際基準のガイドラインをもつJBICは、
 融資すべきでない。
───────────────────────────────────
なお、個別問題として、これまで皆様にメールしています件で・・・
───────────────────────────────────
1)河川横断の独立モニタリングレポート改ざんの指摘に対しては、そうした
  事実はない。どこからリークされたのか明確でない。独立機関もそれを否
  定している。
───────────────────────────────────
2)チャイボ湾での繁殖期での工事に関して
───────────────────────────────────
パイプライン上陸場とHDDの二箇所で工事を実施。行動計画でコミットされて
いる範囲外の工事と認識。今やめて来年やることになると、さらに大きな影響
をもたらす。
───────────────────────────────────
 などという返答で、NGO側と見解が大きく分かれました。

 引き続き、議論していく予定です。
───────────────────────────────────

 この文章から、自然を守ろうとする人達の苦悩が感じ取れると思う。JBIC=
国際協力銀行というのは、名称は紛らわしいが、純然たる日本の組織である。

 彼らは、「融資する側」というよりは、SEIC=サハリンエナジー社と結託し
て、プロジェクトを推進しようとする「エネルギー優先主義の権化」のような
気さえする。

 冷静にもっと広い視野で観て欲しい・・・

 我々が、これから生まれてくる子孫に遺していかなければならないのは、
「貴重な自然」が第一に来ることに間違いない。それが分からなくて、過去に、
人類は、どんなに大切な自然を、たくさん破壊して来た歴史のあることを、今
こそ、肝に銘じるべきである。


  **守ることに情熱を注ぐ人達・・・→ http://tinyurl.com/essjo

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