毒舌!医療と生物をやさしく読み解く入門

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根本原因は「環境ホルモン」なのか〜産婦人科編


 北海道の冬は、油断出来ませんなぁ〜。昨日とは、打って変わった雪景色。

 最高低気温の差が、前日と10度あることなど当たり前。それでも耐える。

 最近は・・・

 12月でも、「雨」が降ることも多い。一昔前なら、雪だっただろうに。

 だから、「根雪」となる日付も、どんどん先延ばしに、なっている。

 50年後…。もうこの世にはいないが、その頃の気候はどうなっているの?

 こんな不安定で厳しい気候の中・・・

 札幌市内でも、昨年11月に、7病院「受け入れ拒否」の事実が、発覚。

 「受け入れ拒否」に遭ったのは、北区に住む30代女性の早産男児である。

 この男児は、1時間半後に、市内の病院に運ばれたが、10日後に死亡した。

 詳細は、以下である・・・
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《2007年11月15日》
───────────────────────────────────
 午後10時39分
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 自宅で腹痛を訴えた後、妊娠27週で1300gの男児出産。119番通報
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 *早産=在胎週数22〜36週で出産すること(通常37〜42週)。
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 午後10時45分(通報後6分)
───────────────────────────────────
 救急隊到着。女性のかかりつけの医院は、重篤な患者を受け入れる施設が、
 整っていなかったため、救急隊員が、新生男児の状況を確認し、消防局指令
 情報センターが、病院選定に入る。
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【病院選定の状況(拒否の理由)】正確には、6病院7拒否 1病院1確認中
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 1.北大病院(三次医療機関、NICUアリ)
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   10:51 院内感染の消毒中でNICU使えない。
         他が受け入れなければうちで診る。

   2回目の連絡 別の患者が入り、受け入れられない。
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 2.札医大病院(三次医療機関、NICUアリ)
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   NICUが満床。継続して、NICUの満床状態が続いていた。
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 3.市立札幌病院
   (三次医療機関、NICUアリ、総合周産期母子医療センター)
───────────────────────────────────
   NICUが満床、その上、当直医が、別の患者の治療で手が離せない。
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 4.KKR札幌医療センター(小児科の二次医療機関、NICUナシ)
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   当時の状況は記録になく、断った理由は、不明だが、子どもの容体は、
   こちらでは、対応出来ない難しいケース。
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 5.天使病院(小児科の二次医療機関、NICUアリ)
───────────────────────────────────
   NICUが満床。設備の余力がなかった。残念でくやしい。
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 6.札幌徳洲会病院(小児科の二次医療機関、NICUナシ)
───────────────────────────────────
   NICUがなく、受け入れられない。受け入れる態勢にないため断った。
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 7.道立こども総合医療・療育センター
   (小児科の二次医療機関、NICUアリ)
───────────────────────────────────
   NICUに一床空きアリ。受け入れ可能か確認中に、消防から別の受け
   入れ先が、見つかったと、連絡が入った。
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 *NICUとは、「新生児集中治療室」のこと。新生児のためのICU。

  貴方も、ドラマ等で見たことがあると思うが、通常出産後処置では、対応
  出来ない様な新生児が、細菌感染を防ぐために、一人ずつ別々の保育器に、
  入れられ、人工呼吸器などで、酸素や栄養をもらいながら、治療を受ける。

  常に、モニターで、心拍数、酸素飽和度などのデータを、監視している。
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 午後10時58分(通報後19分)→ 病院選定とは同時進行
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 救急隊が、新生男児を、救急車に乗せて、女性宅を出発。
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 午後11時07分(通報後28分)
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 市立札幌病院の救急救命センターの医師が、ドクターカーで駆けつけ、救急
 車に同乗し、車内で、応急処置にあたる。
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 *市立札幌病院は、上記で拒否したとはいえ、この時点で、協力している。
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《2007年11月16日》
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 午前0時08分(通報後89分)
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 受け入れ可能とした手稲区内の病院に搬送。新生男児は、心肺停止状態。
 出産した女性は、別の救急車で、産科のある別の病院に搬送され、無事。
───────────────────────────────────
 *手稲区内の病院は、後に、「手稲渓仁会病院」と判明。この病院は第三次
  医療機関で地域周産期母子医療センターであったが、NICUはなかった。

 *市立札幌病院は、翌日、この新生男児の受け入れを申し入れたが、当該の
  手稲溪仁会より、「動かせる状態ではない」と、拒否されている。
───────────────────────────────────
 10日後
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 この新生男児(低出生体重児、一般的には未熟児)は、死亡を確認される。
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 *低出生体重児とは、出生体重が、2500g未満の出生児のこと。以前は、
  未熟児と呼ばれることが多かった。詳細には、1500g未満を極低出生
  体重児、1000g未満を超出生体重児として、分類される。
───────────────────────────────────

 東京や札幌だけじゃなく・・・

 NICUや地域周産期母子医療センター等が集中する他の地方中核都市でも、

 表面に出て来ないだけで、この様な状況が、内包することは想像に難くない。

 前号でも指摘したように、集中すればするほど、「受け入れ拒否」も増える。

 ところで、頻出する重要な"生存のキー"である・・・

 "NICU"という施設を設置する条件とは、如何なるものが、あるのか?
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 ●新生児専門の医師を、24時間体制で、配置する。

 ●新生児3人につき、1人以上の看護師を、24時間体制で、配置する。

 ●人工呼吸器や超音波診断装置(エコーカメラ)など、必要な治療装置や、
  器具を、配備する。
───────────────────────────────────
 *現在においては、非常に高いハードルである。医師も看護師の確保も。
  しかも、代えがほとんどない中で、24時間体制なのだから。

 *ちなみに、地域周産期母子医療センターでもある市立札幌病院では、
  「新生児科医6人、看護師約40人」を要し、24時間体制にあたる。

 *この件を受けて、市立札幌病院は、NICUを、現在の9床から15床に
  増やす方針を、明らかにした。でも、上記の医療人の身体が、心配だな。
  当初は、恐らく、増員など難しく、現スタッフに負担が掛かるだろうから。
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 〜以下の数字は、全て、市立札幌病院〜
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 *1000g未満の新生児の生存退院率 95%
 *NICUの平均在院日数       75.6%
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 **平均在院日数が、長くなれば、新たに、受け入れられる新生児が減る。
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 〜以下の数字は、全て、札幌市〜
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 *2500g未満の新生児誕生の割合
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  1988年 6.8% → 2006年 9.7%(143%)
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 **近年の医療や器具、施設などの進歩により、極端に言えば、以前は殆ど
   亡くなっていた500gの低出生体重児でも、助けられるようになった。
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 *37周未満の早産の割合
───────────────────────────────────
  2001年 5.3% → 2006年 6.6%(125%)
───────────────────────────────────
 *2008年4月〜10月
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  NICUの病床利用率 98.3%
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それでは・・・

 日本という国は、諸外国に比べて、新生児にとって、危険な環境になのか?
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 周産期死亡率(2005年・出生1000あたり)
  ★満28周以降の死産+早期新生児死亡
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 日本    3.3%
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 ドイツ   5.9%

 アメリカ  7.0%

 イギリス  8.5%
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 *ダントツの一位である。1975年には28.7%だった。8.7分の一
  に減っている。つまり、出生1000あたりでは、287人の死亡から、
  33人(−254人)と、大幅に減少しているのである。
───────────────────────────────────
 妊産婦死亡率(2004年・出生10万あたり)
───────────────────────────────────
 日本    4.4%
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 ドイツ   3.7%

 イギリス  6.0%

 アメリカ 10.0%
───────────────────────────────────
 *ドイツには負けているが、アメリカの2分の一以下。又、1975年には
  28.7%だった死亡率が、30年後には約8.7分の一に減っている。
  つまり、出生1000あたりに換算すると、287人の死亡から、33人
  (−254人)と、大幅に減少している。
───────────────────────────────────

 現状を、あまり悲観しないという意味で・・・

 周産期にまつわる死亡率を、諸外国と比較したが、本当はそれ程意味はない。

 目の前の命を一人でも多く助けたいと思うのが、医療人であり救命人だから。

 ただ、救命人(消防側)は、迅速に「1分でも早い搬送」を、心掛けるが、

 医療人側は、それだけではなく、「搬送後の治療」も、より考慮に入れる。

 双方、考え方が違う訳ではない・・・

 どちらも、母胎も出生児も、安全に助けたいと思っている。それは同じ。

 だからこそ、如何に、迅速に搬送出来、安全に治療が可能かを、考えるべき。

 安全に治療するという中には、仮に、急遽、NICUの設備がない病院に、

 搬送されたにしても、その後、迅速に、NICU完備の病院に移すルートを、

 確立することが、肝要だと思われます。このルートがないから、不安。

 それから・・・

 現在の札幌が行っている予め「NICUの空き」を、確認するのは、重要。

 その情報によって、より迅速に、母胎と新生児を、その施設に、送り込める。

 残念だが、いくら望んでも、専門の医師やNICUは、直ぐには増えない。

 その間は・・・

 現状の医療スタッフと当該設備で、何とかしなければ、ならないのである。

 無い物ねだりが出来ない中で、一人でも多くの命を、救わなければならない。

 無理だと言えない状況で、医療人や救命人には、本当に、負担がのし掛かる。

 だけど、何故に・・・

 こんなに、「正常分娩」で、処置出来ない妊婦や新生児が、増えたのか?

 食生活の変化? 環境ホルモンのせい? 生活リズムの変化によるもの?

 出産の回数が減ったから? 精子の減少によるもの? 分からないよなぁ〜。

 結局・・・

 根本原因を解明しなければ、どんな施策も、"付け焼き刃"に、なってしまう。

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