毒舌!医療と生物をやさしく読み解く入門

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表面上の可愛さだけを捉えて良いのか?
「かもちゃん」の背後にある事実



 ゴマフアザラシの「かもちゃん」は可愛い。それ自体は否定しない。ただ、
彼の背後に迫っている"恐怖"に思いを馳せる人は皆無なのではないだろうか…。


【"ゴマフアザラシ"とは?】

 "ゴマフアザラシ"がアイドルになったのはこれまでに何回もあった。地域も
色々、マスコミ報道も至って和やかなムードである。しかし、彼らの本当の生
態や生息状況などを一度でも伝えた事があっただろうか?

     「"可愛さ"の余りに本質や事実がないがしろになる」

 それじゃ「たまちゃん」「ごまちゃん」「かもちゃん」などの"ゴマフアザ
ラシ"とは一体何者なのか?ちょっと解説してみたい。

["ゴマフアザラシ"とは何者?]

1.英名…Spotted Seal

2.分類…食肉目、アザラシ科、キタアザラシ亜科

3.体長 ♂成獣…1.7m 体重…80〜120kg
  体長 ♀成獣…1.6m 体重…80〜120kg
  体長「パップ」と呼ばれる赤ちゃんで…75〜90cm 体重…7〜12kg

4.分布…オホーツク海〜北海道近海、日本海ロシア沿岸、ベーリング海、
     チュコート海、北海、他未確認地域アリ

  * 分布場所によって、体格が若干違う。例えば、北海道近海のものと
    ベーリング海のものを比較すると、平均して「北海道近海ものの方が
    大きい」。

5.食物…カレイ、鮭、タコ、貝、イカの他、海底に住む魚などを好んで食す。

6.寿命…30年くらい、4〜5年で繁殖可能。

7.生息数…世界で約40万頭程度、オホーツク海で約13万頭、ベーリング
      海20万頭、オホーツクとベーリングで世界の80%以上である。

8.『トリビア的知識』

● 赤ちゃんの時の"白い毛皮"は、流氷の上にいる時、敵に見つからないため。

● ゴマフの「フ」は、斑文、つまり、模様の事である。

● もしかして、ゴマフの「フ」は、ごまを振(ふ)ったようなの「フ」かもし
  れない(拓的勝手にトリビア)。

以上の事を踏まえて、次に進みます。


【そんな"愛すべき動物達"に迫る危険・恐怖】

 ゴマフアザラシだけじゃなく、ここ20年間に「海洋哺乳類」の大量死が多
く確認されています。次に実例を挙げます。

1.1987年 バイカルアザラシの大量死 10,000頭

2.1987年 大西洋沿岸でのバンドウイルカの大量死 700頭

3.1988年 北欧の北海・バルト海でゴマフアザラシやハイイロアザラシ
  の大量死 88.4〜89.4までに 約20,000頭

4.1990〜1993年 地中海沿岸でのシマイルカの大量死 1,000頭超

5.2002年5月 スウェーデンやデンマークの沿岸でゴマフアザラシの
          大量死 6,000頭超

これ以外にも小さい事例を挙げると、貴重な命が本当に大量に失われています。

 この中である程度、「原因」が明らかになっているのが・・・

 1.→バイカルアザラシの大量死にも、湖周辺で「犬ジステンパー」で死ん
だ猟犬の死体を湖に捨てたため、それを突いたバイカルアザラシに感染した。

 3.→この時は、死んだアザラシの体から、高濃度の「水銀」「カドミウム」
「鉛」「PCB」など何と150種類もの"有害物質"が検出されました。

 直接の死因は「ジステンパーウィルス」によるウィルス性疾患だったが、有
害化学物質や重金属の経年による体内蓄積で「免疫力低下」を起こし、結果的
に"大量死"を招いたと指摘されています。

 5.→直接の死因は「犬ジステンパーウィルスの変異株」による感染

 今回の主題である『海洋汚染』に入る前に「ジステンパーウィルス」につい
ても、簡単に説明しておきたいと思います。

 「ジステンパー」というと"犬"が一番最初に頭に浮かびますが、キツネやタ
ヌキなどの犬科動物だけでなく、フェレットやミンクなどイタチの仲間、アラ
イグマ、パンダ、レッサーパンダ…。

 更に、今回問題になったアシカ、アザラシ、オットセイなどの海獣類やイル
カの仲間、その上、ライオン、虎、ヒョウなど大型猫科動物に至るまで、様々
な種、多数の動物達の「天敵」となっています。


【"海洋汚染"によって体が蝕まれる動物達】

 水銀、カドミウム、鉛などの有毒重金属、PCBやダイオキシン類などの有
機塩素化合物・・・本来であれば、あまり自然界に存在しない物質達。人類は
自分らの生活を営むため、これらをある意味「野放し」にして来た。

「これらの"汚染物質"はどういう経路で、

                自然界に排出されていったのだろう?」

[汚染物質の排出源]

◆ タンカーなど船舶の事故等による「流出原油」

◆ 石油やガスの開発によるもの(失敗した時は特に影響が大きい)

◆ 工業廃水に含まれる「重金属」

◆ 家庭排水に含まれる「有機リン系物質」

◆ 養殖用生け簀や船底に貝の付着を防ぐための「有機スズ化合物」

◆ 工場のばい煙に含まれる「各種有毒物質」

◆ 不法投棄される「放射性廃棄物」や核実験などによる「放射能」

◆ "プラスチック"に代表されるゴミ問題起因の「ダイオキシン類」etc…。

 このように「陸上」「大気」「海中」あらゆる手段を経て、海に蓄積されて
行っているのである。その物質達は、海水からだけではなく、魚介類や海鳥、
海洋哺乳動物などから、更に「濃縮された形」で検出されるのだ。

 ほとんどの物質は、自然界で長年の間、分解される事はありません。だから、
上のような「排出経路」が増えれば増えるほど、どんどん蓄積されて行く。

 汚染物質によって、先に挙げたように、海洋哺乳類を中心に「生殖能力の低
下」という"種の保存"にとっては由々しき事態も引き起こしている。

 そのメカニズムは、残留性の化学物質が、プランクトン→小さな魚→大きな
魚→哺乳動物へと連なる"海の食物連鎖"を通して、濃縮・蓄積されて行く。

 海洋動物は、冷たい海水から身を守るために「厚い脂肪層」をまとっている。
しかし、化学物質の多くが「水よりも油に溶ける性質」を持っていることから、
エサ(魚など)の脂肪分を介して、濃縮された有害化学物質が食物連鎖の頂点に
立つ"海洋哺乳類"に大量に蓄積されてしまう。
           ↓
「生殖能力の低下」などを引き起こし、最悪の場合は様々な複合要素を重ねて
「死」を迎えてしまう。

 人類も動物である以上、この「食物連鎖」から逃れる事は出来ず、上記のア
ザラシやイルカなど"海洋哺乳類の大量死"を他山の石などとは決して言ってお
られないのである。

 「この"最大の警告"に耳を素直に傾けられなければ、

                 人類の滅亡はそう遠くないだろう」


*この問題は、奥が深いので折に触れて、取り上げて行こうと思っています。


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