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どんなメカニズムで毒を生むのか? 時々発生する「貝毒」とはいったい何なんだろう?元々、貝が持っているモ ノ、それとも海に突然発生するモノ??何れにしても、良く分からない・・・。 【今回の犠牲は"カキえもん"!?】 4月3日、釧路管内にある全国的にも、「カキ」で有名な厚岸町で"麻痺性貝 毒"が検出された。検出された貝毒は、14.3MU(マウスユニット)で、食品 衛生法で定められた基準値の4MU(1g当たり)の約3倍以上であった。 これを受け、同漁協では、3月30日以降に、太平洋東部海域(釧路、十勝管 内)から出荷されたカキ約15tの自主回収を決め、安全が確認されるまで、出 荷を自粛する。 私も10数年前、釧路に住んでいた頃は、毎年10月になると開催される「 厚岸カキ祭り」を非常に楽しみにしていた。生で良し、焼いて良し、会社の同 僚と腹一杯、"少し大振りなカキ"を食した記憶が今でも蘇える。 しかし、この頃、厚岸のカキ養殖は丁度「過渡期」を迎えていたようだ。何 故なら、アイヌ語で「カキがたくさんいる所」という意味を持つほど、数百年 前には、天然のカキがたくさん採れていた場所で、純粋の厚岸産カキ"がなくな ってしまったのだ。 もちろん、近年は「養殖ガキ」だったが、それでも元となる種苗を"100% 宮城産の物"に頼っていたのである。つまり、それらを持ってきて、厚岸町の前 にある太平洋に浸けるだけ。育ちだけが「厚岸産」だったのである。 だが、危機感を持った厚岸の"カキ職人達"は、平成11年から、姉妹都市で あるオーストラリアのクラレンス市を見習い、国内初のカルチレス人工採苗(カ キ殻粉末に一粒一粒付着される方法)により、シングルシードタイプの種苗を生 産、種作りから育成・販売まで「純厚岸産」の養殖を完成させる。 そこで生まれたのが・・・全国の有名料理店で珍重されている 「ホリエモン以上の人気を持つ、"カキえもん"なのである」 今回の"麻痺性貝毒"で、厚岸のカキ職人達は大きな被害を受けたことは確か だが、全国の料理人達、グルメ、酒飲み達から、至福の楽しみを奪ってしまっ たのである。 ここで疑問が浮かぶ。この正体不明である悪者… 「"貝毒"って、いったい何なんだ?聞いたことはあるけど、余り知らん」 【"貝毒"が発生するメカニズム!?】 1."貝毒"とは? 実は、詳細な「発生のメカニズム」は、未だに解明されていない。 主に、二枚貝(カキ、アサリ、ホタテなど)が、餌として、海水中の"毒を持 った植物プランクトン"をえらで濾し取って、食べることで、体内(中腸腺 =肝臓と膵臓に当たる=通称うろ)に蓄積し、有毒化する。この毒は、貝に とって影響はないが、人間など脊椎動物には「有毒」なのである。 厄介なことに、これらの毒性分は「熱に強く」、加熱調理しても、毒性は 弱くならない。ただ、餌である毒素を含むプランクトンがいなくなれば、 貝の体内から、毒は減少し、やがては消滅してしまう。 これらのプランクトンは、普段、泥の中にタネ(休眠細胞=シスト)の状態で 潜んでいて、水温が適当な時期になると、発芽・増殖し、海水中に大量に 現れる。 古くから発生している自然現象の一つで、今から約200年以上も前の 1793年、カナダで"貝毒"による中毒事件の記録があり。日本でも、 1948年、愛知県豊橋市で発生。これが国内第一号。 2."貝毒"の種類 今回問題となった「麻痺性貝毒」の他、「下痢性貝毒」「神経性貝毒」「 記憶喪失性貝毒」などが存在することが、判明している。この中で、特に、 問題になるのは「麻痺性」と「下痢性」の2種類である。 ─────────────────────────────────── [麻痺性貝毒]PSP(Paralytic Shellfish Poisoning) ・原因プランクトン(発生しやすい時期、水温) アレキサンドリウム・タマレンセ(2〜5月、12〜15℃、広島など西日本) アレキサンドリウム・カテネラ(4〜8月、20〜23℃、北海道、東北など) ジムノディウム・カテナータム(山口県、大分県など) etc…。 ・毒性成分とその毒性 サキシトシン、ゴニオトキシン、ネオサキシトキシンなど。「水溶性の 神経毒」。高い毒性成分は、フグ毒(テトロドトキシン)に匹敵する毒力 を持ち、神経筋肉系を強力に麻痺させる。威力は、1mgで2,000 〜5,000匹のマウスを殺すほどである。 ・典型的な症状と致死量 食後約30分で、下、唇、顔面などがしびれてくる。やがて、全身に拡 がり、運動失調や言語障害が起きる。更に、重症になると12時間以内 に呼吸困難により、死亡。12時間を超えれば、回復に向かう。 体重60kgの大人で、約3,000〜20,000MU(今回のカキの 肉重量が50gだとすると15〜100個分)。この単位に使われるMU は、"マウスユニット"と呼ばれるモノで、「麻痺性貝毒」では、20g のマウスが15分で死亡する毒の量を"1MU"としている。 「規制値」は、上記にもあるように、4MU/g である。 ・救急法 出来るだけ早く、胃の中の物を吐き出させて、病院へ直行する。 [下痢性貝毒]DSP(Diarrhetic Shellfish Poisoning) ・原因プランクトン(発生しやすい時期、水温) ディフィシス・フォルティ etc…。 ・毒性成分とその毒性 オカダ酸、ディノフィシストキシン、ペクテノトキシンなど。「脂溶性 の毒」。オカダ酸類は、強い下痢性を有し、中毒の主原因。その上、発 ガン促進作用もある。ペクテノトキシンは、下痢性と共に、強い肝臓毒 性を有する。何れも、"消化器系の障害を引き起こす事"が特徴。 ・典型的な症状 「下痢症状」の他に、吐き気、おう吐、腹痛が起こる。食後30分から 4時間以内に発症する。中毒の発生が6〜9月に集中することから、"腸 炎ビブリオ"と誤認されやすいが、「発症までの時間が短い」「発熱がな い」というところから、区別が可能。およそ3日で全快、死亡例なし。 "マウスユニットの基準"については、麻痺性と異なり、20gのマウス が24時間で死亡する毒の量を"1MU"にしている。 「規制値」は、0.05MU/g である。 ─────────────────────────────────── 「熱しても、焼いても、効果がないというのが、ちょっと気に掛かる」 【今回の"貝毒"騒動の推移】 不思議な事に、今回のプランクトンは「海水からは検出されなかった」ので ある。ごく近くにあった"アサリ"からも、結局は、規制値を超える量は検出さ れなかったが、一時は出荷を自粛していた(現在は再開されている)。 「どうも"貝毒"の影響が、主要生産物である"カキえもん"に集中してしまった」 この様に"貝毒"の影響は予想が付かないし、今のところ、対策をするのも難 しい状態にある。どこで発生するかも分からないし、どうやって忍び寄るのか も定かではない。 一様、大雑把に、日本と北米沿岸では、一年を通じて、「貝が毒化」するこ とが分かっている。また、貝毒プランクトンは、「水温の上昇」や海水が「富 栄養化」する(リンや窒素などの栄養源が多くなる=排水により汚くなる)と増 殖しやすくなる。 ある意味、人間が"貝毒"の原因を増やしているとも言える。実際に、サハリ ンの油田開発が行われている地域から、北海道のオホーツク沿岸に、貝毒プラ ンクトンが流れ込んでいる可能性があるという報告もなされている。 「"貝毒"の謎が1日でも早く解明されることを期待している」 この騒動の推移も、出荷自粛からの初めての検査(10日)において、2MU /gで規制値の半分になった。1週間ごと17、24日に行われる後2回の検 査に合格すれば、「水揚げ」や「出荷の自主規制」が解除される。 道産子代表として私からも、 『今まで以上にきちっとした検査を行いますので、 厚岸の魅力が一杯詰まった"カキえもん"をまた宜しくお願いしますm(_ _)m』
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