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決め付けて良いのか?本当に必要なのは1 これから"医師"として、飛び出そうとしている卵達。しかし、彼らは卒業段 階でも、最低限の医療技術や知識を身に付けてない場合も。教育に問題アリ? 【"知識"と"訓練不足"?】 北海道の北にある旭川市。そこには、道北の医療拠点にもなる「国立大学法 人・旭川医科大学」が存在する。ここの学生達が、今回のサンプルである。 「"彼らに宿っていた問題"とは何か?」 ここで学んでいる医学部5、6年生の約半数が「血液型検査で判定ミス」を していたというのだ。これは、同大学・輸血部の友田豊技師らの調査で判明し た。 この調査結果に関して、友田技師は「実習などでも、正解率が低く、知識や 訓練が足りないと思っていたが、数字で裏付けられた」と語っている。この結 果は、今日から千葉県で行われている"日本輸血学会"で発表されている。 調査は、平成15年(2003)〜平成16年(2004)、同大5、6年生の計151 人を対象に行われた。設定は「夜間に、救急患者が、搬送され、学生自身が、 "血液型判定"と"救急輸血"をする」状況。 この正解率が・・・ ─────────────────────────────────── 5年生 6年生 平均 ─────────────────────────────────── 平成15年 40% 57% ─────────────────────────────────── 平成16年 58% 50.3% ─────────────────────────────────── 誤りの大半は、「抗原と抗体の関係」を正しく理解せずに、"A型とB型を取 り違えた"というものだったとの事。事前に「検査手順を書いたマニュアルを配 布され、説明を受けた」にも拘わらずだ。 確かに、「血液型判定」は、医師になるための基礎の基礎だ。これが出来な いと、当然、死に直結するし、"医療ミス"として、訴えられるだろう。本音を 言えば、こんな人間が、国家試験を簡単に通り、医師になってもらいたくない。 だが、"この問題"をそんなに簡単に判断して良いのだろうか。ここには、現 在、実際の医療現場でも、多発する"医療ミス"や"医療過誤"に繋がる重大な事 由が含んでいると思われる。 「それでは、その"重大な事由"とは何なんだろう?」 【背景にある膨大な"医療教育問題"】 医師になるには、一般的に、6年生の医学部を卒業した後、医師国家試験に 合格し、2年間の研修医期間を終了後、晴れて、「医師デビュー」出来る。普 通は、将来を見据えて、研修の科目を決めるのだが、実際、開業するときは、 「どんな科目を選らんでも構わない」という現実も存在する。 だから、"儲かる"ということを前提として、内科医が、美容整形外科を開い たり、眼科医でもないのに、コンタクトレンズを作る会社の嘱託医になってい たりするのである。こんな事例は、枚挙に暇がない。 こういう倫理や体制の面も踏まえて、現在、膨大にある"医療教育問題"を読 み解いて行くと、日本では、医学部を受験する時から、医師になるまで、ずっ と「頭でっかち」のままで、進行してしまうということだ。 ─────────────────────────────────── [そうなってしまう"問題点"] ─────────────────────────────────── ×01.大学の教室に座って、聞いているだけの講義が多すぎる。 ×02.一般教養が、軽視されている。 ×03.医師になろうとする人間なのに、「使命感」がなさ過ぎる。 ×04.教員の「教育業績評価」をするシステムが、確立されていない。 ×05.医局で、学位を取るためだけに、無駄な研究をさせられてしまう。 ×06.医局は、同じ大学の出身者だけで固まり、ぬるま湯的な環境。 ×07.医師国家試験に受かった段階で、既に、将来を確保した気でいる。 ×08.医学部に入って時点で、競争は終わり、燃え尽きてしまう。 ×09.医師がピラミッドの頂点で、その他スタッフは自分より下という意識。 ×10.研修医時代に、脱落者がほとんどいない。 ×11.臨床的な授業(現場実習も含め)が、少なすぎる。 ×12.時間的余裕がないため、「倫理」や「心」の問題まで踏み込めない。 ─────────────────────────────────── [そうならないための"解決法"] ─────────────────────────────────── ─────────────────────────────────── ○01,08,11の解決法(講義多い、受験燃え尽き、臨床実習少ない) ─────────────────────────────────── 総単位数の削減。言語科目は最小限度にして、後は"選択制"にする。専門科 目も、本当に必要なモノのみ選択出来るように「科目選択アドバイザー」を 置く。 入学後、出来るだけ早い時期に、「病院ボランティア」「看護業務」「老人 福祉施設での実習」など実際の医療現場を経験させる(こういう教育手法= "アーリー・エクスポージャー"という)。 現在、これらを行っている大学とやっていない大学がある。全てに"必修化" させることが肝要。こういう教育を施すことにより、大学と実際の医療現場 との密接な関係を築き上げることも可能になる。 臨床実習には、「*クリニカル・クラークシップ」を導入すること。これに より、学生達に、法律で許される範囲内で、医療行為をたくさん経験させる ことが、出来る。 ─────────────────────────────────── *クリニカル・クラークシップ ─────────────────────────────────── 米ジョン・ホプキンス大学のウィリアム・オスラー教授によって提唱された。 目的は、知識偏重の教育を見直し、ベッドの近くで、実際の患者を診ること により、高い学習、経験効果がある。 日本医学教育学会卒前教育委員会で、次のように定義されている(1991)。 1.医学生が、医療チームの一員として、実際の患者診療に従事しながら、 臨床実習を行う。 2.指導医の指導、あるいは、一定範囲の医療行為を行い、医学生として、 責任を負う。 3.将来、医師となるために、必要な知識、技能、及び、態度・価値観を身 に付ける。 ★この定義から、既に14年経っている。しかし、大学によって、取り組み 方に、かなりの差がある。積極に導入出来ないのは、経費のせいなのか、 それともやる気がないのか。これも、全大学で"必修化"するべきである。 ─────────────────────────────────── ○02の解決策(一般教養の軽視) ─────────────────────────────────── どうしても、医学部ということで「専門的な科目」に力点が置かれる。しか も、受験勉強でも、この一般教養が抜け落ちている。その名もズバリ「一般 教養」という科目を作り、必修にする(内容は毎年改訂する)。 個別の題目については、現在は、インターネットが発達していることもあり、 学生が、自分自身で、勉強すること。大学に全てを負わせては行けない。 ─────────────────────────────────── ○03,12の解決策(使命感なし、倫理、心の問題まで時間なし) ─────────────────────────────────── アメリカでは、「ヘルス・リサーチ(健康に関する研究)」の中に、1970 年代から既に、「バイオ・エシックス(生命倫理)」という概念が存在した。 つまり、医療にまつわる「脳死」「臓器移植」「患者と医師の関係」「末期 のケアと看護」「臨床治験」など、現在、日本で論争が巻き起こっている問 題に対する取り組みが、30年以上も前に始められていたのだ。 だから、解決策を模索すると最良なのは「バイオ・エシックス(生命倫理)」 をそのまま、大学のカリキュラムに取り入れること。この学問により、患者 の視線でも、考えることが出来るようになる。 "医療という使命感の高い職業"を通して、「倫理」や「心の問題」を再認識 させることになり、一石二鳥どころか"一石五鳥"くらいの効果はある。 ─────────────────────────────────── ☆今後、極めて重要な分野である「ヘルス・リサーチ」と「バイオ・エシッ クス」の詳細については、来週、改めて取り上げたいと思います。 ─────────────────────────────────── ○04の解決法(教員の教育業績評価システム) ─────────────────────────────────── これを作るところも、漸く、出て来たようだ。しかし、数がいかんせん少な すぎる。学生の質を上げることも、急務だが、教える側の質も上げないと、 卒業する"医療人"の底上げにはならない。このシステムを直ぐに作ること。 ─────────────────────────────────── ○05の解決法(学位のためだけの奉公) ─────────────────────────────────── どうしても「医学博士」を取らなければならないという呪縛を解く。そのた めには、"学位制度"をなくすのが、一番である。ドイツでは、既に、21世 紀の優秀な若手科学者(医学含む)を育てるために、"学位制度"を廃止した。 ─────────────────────────────────── ○06の解決法(医局は、ぬるま湯的) ─────────────────────────────────── 大学を卒業して、5年以上は「医局」に戻れないようにする。つまり、武者 修行(一般医療施設など)に出す。その施設で、"実績証明書"を発行してもら う(ごまかしを避けるため)。医局員の1/3は、他大学から取ることを義務 付ける。 ─────────────────────────────────── ○09の解決方法(医師が一番エライ) ─────────────────────────────────── 現代は「チーム医療の時代」であるという認識を、入学当初から、カリキュ ラムに組み込み、教えて行く。薬剤師、看護師、レントゲン技師、臨床心理 士、ソーシャルワーカー、その他、様々な人々の関わりによって、「医療が 成り立っている」ということを、頭と体に染み込ませる。 ─────────────────────────────────── ○07,10の解決法(国家試験で将来安泰、研修医脱落なし) ─────────────────────────────────── 2年間の間に、医師に向かない人は「医師免許剥奪」。その代わり、"医療コ ンサルタント"の資格を与える。この免許は、実際の医療行為は出来ないが、 患者の相談に乗り、医師に対して、紹介状などを出すことは可能。 ある程度、研修の過程で、淘汰されていかないと"質の高い人材"は育たない。 酷なようだが、早く気付かせることによって、本人のためにもなる。そして、 この人の起こす確率が高かっただろう"医療ミス"も、未然に防ぐことになる。 ─────────────────────────────────── この他に、読者の皆様が考える"医療教育問題"はあるでしょうか? 何かありましたら、こちらまで送っていただけたら幸いです。 ↓ iryo@unlimit517.co.jp ─────────────────────────────────── 「色々なことが頭に浮かんできて、なかなかまとまらない。それだけ・・・ この問題は、膨大で、重要で、様々な案件を含んでいるということだ」 **未来はあるのか・・・ http://tinyurl.com/8qqk8
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