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子供が欲しいのに、生むことが出来ない。
"不妊治療"は有効なのか!?2



 "不妊治療"の第2のステップ「高度生殖医療」。どうしても、子供が欲しい。
その気持ちは良く分かる。しかし、この治療には、利点と欠点が存在する…。


【"高度生殖医療"とは?】

 "一般不妊治療"を受けてきたが、症状が改善されないし、もちろん、妊娠に
も至らない。そういう場合、「本当に、子供を望むなら」(充分に夫婦で検討す
る)、次の治療段階に、移るしかない。

 それが・・・

 「"高度生殖医療"、もしくは、"補助生殖医療"と呼ばれる治療である」

 "高度生殖医療"…英語では、ART(Assisted Reproductive Technology)。

         以前は、女性の卵巣内から、卵子を体の外に取り出し、受
         精させる技術の事。しかし、最近では、人工授精など、精
         子を操作する(生きの良い精子を回収したり、濃縮したりす
         る技術)ことを、含めるケースも、多く見受けられます。

         具体的な治療法である「体外受精−胚移植(IVF-ET)」「顕
         微授精(ICSI)」「配偶子卵管内移植(GIFT)」「接合子卵管
         内移植(ZIFT)」などの総称="高度生殖医療"
───────────────────────────────────
1.体外受精−胚移植(IVF-ET)
───────────────────────────────────
 1978(昭和53)年、イギリスで、世界初めての"体外受精"に成功。ルイ
 ーズという女の子だったが、当時は興味本位から「試験管ベビー」などと呼
 ばれていた。国内初は、この5年後の1983(昭和58)年。

 卵子を体外に取り出し、精子と受精させ、この受精卵を培養して、「胚」の
 状態にして、子宮に戻す方法。

 適応:卵管性不妊、難治性不妊、男性不妊、免疫性不妊

 入院の必要なし、外来でOK。治療費の目安:20〜60万円/1回
───────────────────────────────────
2.顕微授精(ICSI)
───────────────────────────────────
 1989(平成元)年、シンガポールで、世界初の"顕微授精"による、赤ちゃ
 んが誕生。国内初は、この3年後の1992(平成4)年。

 顕微鏡下、細いガラス管を使用して、精子を卵に注入し、受精させる方法。

 以前は、卵の透明体に、ガラス管で穴を開け、精子の進入を助ける「透明体
 開孔術(PZD)」、囲卵腔(いらんくう)に精子を注入する「囲卵腔内内精子注入
 法(SUZI)」なども使われていましたが、現在は、成功率の高い「ICSI」にな
 っています。

 ICSI=「細胞質内精子注入法」と呼ばれ、顕微鏡で、卵子を見ながら、卵の
    細胞質内に、直接、1個の精子を注入する方法。
 
 適応:卵管性不妊、難治性不妊、男性不妊、免疫性不妊

 入院に必要なし、外来でOK。
 治療費の目安:体外受精費+5〜20万円/1回
───────────────────────────────────
3.配偶子卵管内移植(GIFT):ギフト法
───────────────────────────────────
 配偶子=受精前の卵子や精子のこと。卵子と精子を混ぜて、受精する前の状
 態で、卵管の先に戻す。卵管に戻すので、受精した後の受精卵が、子宮に移
 動出来るように、少なくとも、片方の卵管が通っていることが条件。

 妊娠率は、体外受精より、わずかに高く、流産率は、わずかに低くなる。

 適応:難治性不妊

 手術、および、入院が必要(腹腔鏡下で、卵子と精子の戻しをするため)。
 治療費の目安:30〜50万円/1回
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4.接合子卵管内移植(ZIFT):ジフト法
───────────────────────────────────
 接合子=受精卵のこと。GIFTと同様、少なくとも、片方の卵管が通っている
 ことが条件。

 適応:難治性不妊、男性不妊、免疫性不妊

 手術、および、入院が必要(腹腔鏡下で、卵子と精子の戻しをするため)。
 治療費の目安:30〜50万円/1回
───────────────────────────────────

 日本産科婦人科学会の調査では、2002年の年間出生数は、115万3,855人。
この内、体外受精で生まれた数は、1万5,223人。全出生数の1.3%、
76人に1人は「体外受精で生まれた赤ちゃん」である。

 *1983〜2002年までの累計・体外受精児=10万189人
                         ↓
             通常の体外受精で出生= 5万5,688人
                         (約55.6%)
                顕微授精で出生= 3万1,185人
                         (約31.1%)
               凍結受精卵で出生= 1万3,316人
                         (約13.3%)

 現在では、「体外受精児」の割合が、もっと増えていると予測されます。子
供が誕生することは、とても喜ばしいことですが、"高度生殖医療"には、様々
な問題が山積します。

 それらが・・・

「"経済的"、"心理的"、"肉体的"負担になり、患者に重くのし掛かってくる」


【"高度生殖医療"の問題点】

 前出、患者の負担、他、"高度生殖医療"にまつわる問題点を列挙します。
───────────────────────────────────
●"高度生殖医療"は「健康保険適用外」である(患者の経済的、心理的負担)。
───────────────────────────────────
 上に記した"治療費"の目安を見ても分かるように、1回の治療だけでも、莫
 大な費用が掛かる。しかも、上の4つの方法の成功率はどれも「25%前後」
 ほどしかない(4人に1人)。

 そういう理由で、治療をどんどんステップアップし、回数も増やすと、直ぐ
 に、数百万の単位になってしまう。お金に対する患者の経済的負担、なかな
 か妊娠出来ない心理的負担は、計り知れない。

 それでは、何故、

   「厚労省は、"高度生殖医療"を保険給付の対象にしないのか?」
───────────────────────────────────
 [厚労省の見解]

 1.成功率が低く、また、母胎の安全性(多胎妊娠、早産等)の確保の面で、
   問題があること。

 2.多胎妊娠に対する減数手術(一部の胎児を子宮内において死滅させる)等
   については、一定の倫理面での問題もあること。

 3.非配偶者間については、社会的合意を得られていないこと。また、配偶
   者間であっても、非配偶者間の人工授精等を、配偶者間のものとして、
   申請する等の倫理面での問題発生を防止する仕組みを、医療保険制度独
   自に設けることは、困難なこと。

 4.限られた医療財源の効率的配分という観点からの検討が必要なこと。
   (もし、"高度生殖医療"を保険適用にすると200億円以上になるという
   試算がある。つまり、金が掛かりすぎるというのが、本音である)
───────────────────────────────────
 一様、筋は通っている。ただ、この"不妊治療"という分野に関しては、先週
 取り上げた"バイオエシックス"の問題と共に、日本の医療で、非常に遅れて
 いる部分だとは、言えるだろう(技術じゃなくて、倫理や制度が)。

 それでも、遅ればせながら、2004年度から、「不妊治療に対する助成制
 度」が始まった。体外受精や顕微授精などの"高度生殖医療"を行う夫婦に対
 し、年10万円を2年間、助成されるようになった。
 
 しかし、実際には、やっていない所もあるので、各自治体に問い合わせて見
 る必要があります。「でも、10万円かぁ〜(^^;)って感じだなぁ」。
───────────────────────────────────
●母胎に対する影響(患者の心理的、肉体的負担)
───────────────────────────────────
 [心理的負担]

 先ず、医師は、"高度生殖医療"の良い部分ばかりじゃなく、悪い部分も含め
 て、治療に入る前に、患者にしっかりと「インフォームド・コンセント」を
 施すべきである。

 その上で、その医師が"高度生殖医療"を勧めたとしても、患者側としては、
 一人の意見を鵜呑みにせず、何らかの方法で、「セカンド・オピニオン」を
 求めるべきです。

 もしかすると、"一般不妊治療"で改善される可能性もあるからです。実際に、
 体外受精で第1子を出産した20%が、第2子を「自然妊娠」で出産してい
 る報告もあります。もう一度、冷静に「セカンド・オピニオン」を…。

 また、ネットのHPなどで、「"体外受精の良さ"ばかりを解き、その妊娠率
 が異常に高いところ」は、避けた方が懸命だと思われます。何を根拠に、そ
 の数字が作り上げられたのか?疑問に感じるところが多いからです。

 医師は、初めての患者以上に、既に、数回"高度生殖医療"を受けている患者
 に関してのカウンセリングを、もっと適切に行うべきだと思います。彼女ら
 は、色々な負担のために、頑なな心になっていることが多いからです。

 [肉体的負担]

 ・多胎妊娠…移植胚数は「3個」までと厳しく制限されている。だが、20
       〜30%の確率で、双子が誕生。それ以上の確率も高い。

 ・子宮外妊娠…妊娠した中で、3〜5%(自然妊娠では1%前後)が、子宮外
        妊娠になる。卵管が問題因子になっているグループに多い。

 ・卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

  無排卵症に対する排卵誘発、および、体外受精−胚移植やGIFTの場合の卵
  巣刺激の際に、発症するもの。卵巣腫大や腹水、時には、胸水も伴う。

 ・感染損傷…採卵に用いる針により、血管、膀胱、腸管、その他の場所など
       を刺してしまうことにより、感染する。感染予防=抗生物質

 ・HMG製剤によるアレルギー性反応

  HMG製剤(卵胞を刺激するホルモン剤)は、筋注、あるいは、皮下注で、投与
  します。その注射部位に、まれに、炎症、発熱、関節痛、頭痛、全身の倦
  怠感などのアレルギー反応が起こる。
───────────────────────────────────
●胚培養士[エンブリオロジスト]の育成("高度生殖医療"にまつわる問題)
───────────────────────────────────
 "不妊治療"の技術的な進歩により、"高度生殖医療"を駆使出来る技術者とし
 て、生殖細胞や胚を取り扱うことの出来る"高度生殖医療"胚培養士(エンブリ
 オロジスト)という職種が、注目されている。

 現在(2003年3月末)、日本の"高度生殖医療"施設は、「体外受精、胚移
 植、および、GIFTの臨床に関する登録施設=595ヶ所」「ヒト胚、および、
 卵子の凍結保存と移植の臨床実施に関する登録施設=428ヶ所」「顕微授
 精の臨床実施に関する登録施設=320ヶ所」存在する。

 今のところ、資格認定制度はあるが、"胚培養士"を教育し、育成する機関は
 ない。"高度生殖医療"の現場では、当然、欲しいことは確かだが、現状では、
 臨床検査技師の兼務、もしくは、動物関連学科で、生殖細胞、および、胚を
 用いて、研究を行っていた者などを採用して、急場を凌いでいる。
  
 早期に、"胚培養士"の教育、育成機関を設立し、そこから、輩出された人間
 により、"高度生殖医療"の技術レベルを上げ、現在より「妊娠率の向上」を
 目指す必要がある。
───────────────────────────────────

 これらの問題を少しでも、解決していくことが、"高度生殖医療"、および、
"不妊治療"の未来を明るいものにして、行くと思われます。やはり、夫婦揃っ
て、「赤ちゃんが欲しい」という人間の基本的な気持ちは尊重すべきです。
 

 「少し長くなりましたので、"不妊治療"に対する光明は、来週にします」


    **やっぱり欲しい・・・ http://tinyurl.com/a2sl7


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