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トリノでも「ドーピング」が発覚。
五輪は"勝つ事"にしか意義はない?



 ドーピングを行う理由は「国の圧力?」「個人の利益?」それとも…。今回
の冬季五輪開催地トリノでも、違反事例が出てしまった。"薬物"の面から読む。


【"ドーピング"とは一体何か?】

 "ドーピング"という言葉が一般的に知れ渡ったのは、ソウル五輪の100m
走で、驚異的な世界記録を出し、優勝したカナダのベン・ジョンソンが"ドー
ピング"禁止薬物(スタノゾール(筋肉増強剤)の検出により、失格になった事か
らだと思う。

 それでは、この"ドーピング"とは、一体どうものなのか?
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 "ドーピング"(Doping)・・・試合における競技能力を、不公正な目的
                 で高めようとして、生体には、生理的に
                 存在しない物質を用いたり、また、生理
                 的に存在する物質であっても、異常な量
                 を用いたり、それを異常な方法で使用す
                 ることである。

                 実際には、WADA(世界アンチ・ドー
                 ピング機構)規程に挙げられている"禁止
                 薬物"などを使用することが、"ドーピン
                 グ"にあたり、尿検査で、これらが検出
                 されると、処罰される。

                 "ドーピング"の意図がなく、治療目的で
                 "禁止薬物"を使用しても、処罰の対象。
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[一口メモ] 
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南アフリカの先住民のカフィール族が、Dope(ドープ)という刺激・興奮す
る薬を、戦いの前の出陣式などに「疲労回復」「士気向上」のため、使用して
いたことに、由来している。
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 今回、冬季五輪が行われているトリノでも・・・
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 オーストリアのスキー距離、バイアスロンの選手達が、選手村の外に借り上
 げていた宿舎から、「100本以上の注射器」、禁止物質が含まれていると
 される「ぜんそく薬」や「興奮剤」などを発見したと報じられている。
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【規程に挙げられている"禁止薬物"とは?】

 WADA(世界アンチ・ドーピング機構)には、次のような"禁止薬物"が、
リストアップされている。
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1.蛋白同化男性化ステロイド剤
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 [男性ホルモン(内因性)]
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  ●精巣、副腎などから分泌され、精子形成、男性化、蛋白同化作用を併せ
   持つ天然ステロイド。

  ●テストステロン、アンドロステンジオンなど

  ●ただし、元々、体内に存在する物質なので、「正常値からかけ離れてい
   る」ことが、処罰の対象となる。

  ●"内因性"とは、「体内で自然に作られる物質」をいう。
───────────────────────────────────
 [蛋白同化ステロイド(アナボリック・ステロイド)] 筋肉増強剤(外因性)
───────────────────────────────────
  ●男性ホルモンをベースに合成されたもので、蛋白同化作用が、特に強い。

  ●スタノゾール、ステンボロン、オキシメステロン、カルステロンなど

  ●"外因性"とは、「体内で自然に作られない物質」をいう。
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 [その他の蛋白同化剤]
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  ●クレンブテロール、ゼラノール、ジルパテロールなど
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2.ホルモンと関連物質
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 [性腺刺激ホルモン]
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  ●男性ホルモンの分泌促進

  ●ゴナドトロピン類(LH、hCG)
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 [副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)]
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  ●副腎皮質ステロイドの生成を促進する作用を有し、結果的に、副腎性男
   性ホルモン、副腎皮質ホルモン(コルチコステロイド)の分泌を高めるた
   めに、禁止されている。

  ●コルチコトロピン類
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 [エリスロポエチン(EPO)]
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  ●腎臓で作られるホルモンの一種。赤血球の産生を促進する。本来は、貧
   血の治療に使われる。競技の数週間くらい前から、注射すれば、赤血球
   数が増えていき、酸素摂取量の増大から、持久力を高めることが可能。

  ●エリスロポエチン
───────────────────────────────────
 [成長ホルモン]
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  ●「筋肉増強」を目的で、使用される。

  ●成長ホルモン(hGH)、インスリン様成長因子(IGF−1)、機械的成
   長因子(MGF−s)
───────────────────────────────────
 [インスリン]
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  ●糖尿病などにおいて、「血糖値を下げる」のに、使われる。競技におい
   て、使用する目的は、"心臓への負担を軽減すること"である。

  ●インスリン

  ●"インスリン依存性糖尿病の治療"にのみ認められる。事前の申請が必要。
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3.β2作用剤
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  ●医療用としては、気管支拡張剤として、「喘息の治療」に多用される。

  ●フォルモテロール、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン…

  ●吸入にて、治療に使う時は、事前の申請が必要。
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4.抗エストロゲン作用を有する物質
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  ●エストロゲン(女性ホルモン)の生成を抑えることにより、男性化を図る。

  ●アロマターゼ阻害剤

   アナストロゾール、レトロゾール、アミノグルテチミドなど

  ●選択的エストロゲン受容体調節因子(SERMs)

   ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフェン

  ●その他
 
   クロミフェン、シクロフェニル、フルベストラント
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5.利尿剤と隠蔽剤
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  ●利尿剤は、体内の水分を尿として、体外に排出する作用を持ち、心疾患、
   腎疾患、肝疾患などに伴う浮腫の治療、あるいは、高血圧症の治療に、
   使われる。

   一般に、この作用は、服薬依存であり、健常者が服用した場合、生体に
   必要な水分をも、強制的に排出。これを利用し、体重のクラス分けがあ
   る"競技前"の減量に、用いられたりする。

   また、ステロイドなど、薬物ドーピングの隠蔽剤としても、使用される。
   この場合は、競技前に、利尿剤を服用し、体外に排出する。

  ●利尿剤

   アセタゾラミド、アミロリド、クロルタリドン、フロセミドなど

  ●隠蔽剤

   利尿剤、エピテストステロン、プロベネシド、α−還元酵素阻害剤、
   血漿増量物質(アルブミン、デキストラン)など
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6.禁止方法
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  ●酸素運搬能の強化

   血液ドーピング。医療行為以外の目的で、自己血、同種血、異種血、又
   は、その他に由来する赤血球製剤を投与することをいう。

   酸素摂取や酸素運搬を、人為的に促進すること。その例として、過フル
   オロ化合物、エファプロキシラール、組換えヘモグロビン製剤がある。

  ●化学的 物理的操作

   ドーピングコントロールで採取された検体の完全性、及び、有効性を変
   化させるために、改ざん、又は、改ざんしようとすること。

   正当ではない点滴静注、カテーテルの使用、尿のすり替えなど

  ●遺伝子ドーピング

   治療以外の目的で、競技能力を高める可能性のある細胞、遺伝子、遺伝
   子発現の調整は、禁止される。検出が非常に困難であるため、WADA
   も、いろいろと策を講じている。             
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7.興奮剤
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  ●覚醒剤

   疲労感がなくなり、一時的には、運動能力が上がったように感じる。し
   かし、単に、薬理作用で、脳をだましているだけである。

   アンフェタミン、エチルアンフェタミン、メタンフェタミンなど

  ●精神刺激薬

   本来、抗うつ剤として、治療目的に使用される薬剤

   メチルフェニデート、ペモリンなど

  ●カテコラミンβ作動薬

   アドレナリンに代表されるカテコラミン類は、本来、副腎髄質ホルモン
   として、生体が危機的状態に陥った場合、大量に分泌され、強心作用、
   血管収縮による昇圧作用をもたらし、その危機を乗り切ろうとする。

   心臓刺激作用を遮断し、心臓の活動を抑える作用アリ。心を静められる。

   エフェドリン、メチルエフェドリンなど

  ●その他

   ストリキニーネ、コカインなど

  ●アドレナリンは、局所麻酔剤との併用、あるいは、局所使用(例・鼻、
   眼)の場合、禁止されない。

  ●以前、入っていた「カフェイン」は、2005年から"監視プログラム
   対象物質"になり、禁止物質とは見なされない。  
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8.麻薬性鎮痛剤
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  ●植物由来の「アヘン系」「コカ系」と「合成麻薬」があり、何れも、内
   臓痛などに対し、強い鎮痛作用を示す。スポーツ界では、けがや故障な
   どの鎮痛目的、また、不安、緊張、疲労感の除去を目的に使用されるケ
   ース有り。しかし、依存性が高く、連用すると止められなくなる。

  ●アヘン系

   モルヒネ、ジアモルヒネ(ヘロイン)など

  ●コカ系

   コカイン(区分は"興奮剤")

  ●合成麻薬

   ブプレノルフィン、ペンタゾシン、ペチジンなど   
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9.カンナビノイド
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  ●大麻が含む多数の生理活性物質の総称。

  ●ハシシュ、マリファナなど
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10.糖質コルチコイド
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  ●ステロイドホルモンの一種。血糖値を保つ。「筋肉の増強」が目的。

  ●経口使用、経直腸使用、静脈使用、筋肉内使用は、全て禁止。これらの
   使用にあたっては、事前の申請が必要。皮膚外用剤は、禁止ではない。 
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 これ以外にも、それぞれの競技団体において、「ドーピング違反」が成立す
る"禁止物質"が、存在する。

 また・・・

 「指定物質」というものがある。

 基本的な考えは、『医薬品として、広く市販され、ドーピング物質としては、
比較的乱用されることが少なく、従って、不注意で、ドーピング規則違反を起
こしやすいものを、特に指定物質として、定義する』というものである。
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 エフェドリン、L−メチルアンフェタミン、メチルエフェドリン、カンナビ
 ノイド、全ての吸入β2作用剤(クレンブテロールを除く)、プロベネシド、
 全ての糖質コルチコイド、全てのβ遮断剤(アセブトロールなど)、
 アルコール
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 この種の「指定物質」の使用が、競技力向上を目的としたものではないこと
を、競技者が証明出来れば、制裁措置が、軽減されることがある。


 それにしても・・・

 「五輪というのは、"参加することに意義がある"のではなかったのか?」


    **それほどまでして・・・ http://tinyurl.com/hco29


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