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〜「災害派遣医療チーム」が200程度、 全国の病院に緊急配備決定!! 「中越地震」の時に、このメルマガで取り上げた"災害医療チーム"の結成が 遂に決まった。これは特に"自然災害"の多い日本にとっては『画期的な決定』 だと思われる。 [以前のコラム→] http://www.unlimit517.co.jp/ana23.htm 【日本版"DMAT"とは?】 厚労省はこのために急遽、本年度補正予算案に整備費などの補助金 7億8,400万円(こういう名目なら国民は納得する)を盛り込んだ。 「そもそも"DMAT"とは何なんだろう?」 D…Disaster(災害) M…Medical(医療) A…Assistance(支援) T…Team(チーム) の略である。 これは、アメリカを手本として作られる。日本でも既に「東京都」では8月 から始動している(さすが"石原慎太郎知事"である)。中越地震の時も、いち早 く東京から救援活動に行ったなどの実績がある(ハイパーレスキューを含めて)。 [目的は一つ・・・] 「災害医療の最前線に素早く立ち、"救える命"を多くする事である」 【"DMAT"実際の動きと過去の教訓】 1.首都直下型地震や東海地震など大規模な地震が発生した場合、直ぐに航空 機やヘリコプターで被災地入りするため、自衛隊施設や空港に近い災害拠 点病院などを選んで各一チームずつ編成する。 2.チームは「医師」「看護師」「薬剤師」など5人程度で組織し、被災地の 医療機関では対応し切れない負傷者の治療を現場で支援する。 3.被災地に作った基地(ベースキャンプ)から、重傷者はその度、必要に応じ て、被災地以外の大病院に運んだり、その搬送途中も治療を続ける。 「この様な体制を引かなければならない理由とは?」 1995年の阪神大震災で、地震発生後に建物の下敷きになるなどして、筋 肉が圧迫され、俗に「クラッシュ障害」と呼ばれる病気が多発、適切な初期治 療が受けられずに、大勢の人々が亡くなった事が教訓になった。 「"クラッシュ障害"とは一体どういう病気か?」 大きくは次の2つに分けられる。 1.挫滅症候群(クラッシュ・シンドローム) 長時間何らかの理由(建物の倒壊など)で、筋肉に圧迫が掛かり、筋肉細胞が 障害・壊死を起こし、その結果、全身に影響を及ぼすようになった状態。 [次のような影響が…] 筋細胞が壊死→ミオグロビン、カリウム、リン酸が出る ↓ 傷害された筋細胞の膜はカルシウムを取り込み、血清カルシウム値が低下 →血清中のカルシウム低下とカリウムの上昇→"心停止"の可能性を引き起こす →血中に流出したミオグロビン→腎臓に毒性、"急性腎不全"の原因 2.コンパートメント・シンドローム "コンパートメント"とは「腕や脚の筋肉を包む筋膜」の事を言う。これら筋 肉が、上記と同様に圧迫を受けると、局所に浮腫(むくみ)を生じる。 [次のような影響が…] 筋膜は伸展性がない→筋肉組織が腫脹すると中の圧力上昇→"血行障害" 「何故、この2つに"DMAT"による迅速な処置が必要なのか?」 上記のように、筋肉組織が長時間(4時間以上)圧迫を受けている場合「クラ ッシュ障害」に罹っているものと判断し、救出する前に輸液、患肢(患者の体) に駆血帯(注射の時に血流を止めるゴムバンド等)を掛けてから、救出する。 もし、何もしないで引き出してしまった場合、患肢にかかっていた圧が急速 に解除され、血液の再灌流(注ぎ流れる)が生じるため、ショック死したりする 可能性が充分に考えられる。また「クラッシュ障害」自体で死亡する事もある。 以上のような理由からも 「"DMAT"の迅速で安全で確実な処置が必要なのである」 【"DMAT"活動のための準備】 『"救命率"向上のために…』 "DMAT"を編成するチームの人々は (独立行政法人)国立病院機構・災害医療センターで研修が義務付けられている。 それは・・・ 上記「クラッシュ障害」のように災害特有の外傷の処置、水道や電気が途絶 えた環境下での治療法など「独特な緊急医療に関する方法・処置」を学び、一 人でも多くの人を救うためである。 また「災害救急」に不可欠な"自己完結型"で行くそうである。それは、緊急 の出動に備えて、心電図、血圧の携帯型モニター装置、用途に応じた医療品、 各種モバイル機器などは持参する事になっている。 厚労省では、200チームを確保するため、地方自治体に整備費の半額分の 財源確保と事業実施を働きかけるそうである。 【アメリカが手本なら何故!?】 良い事尽くめなようだが、ちょっと疑問がある。アメリカが手本ならば何故、 "そこまで"真似なかったのかという問題が一つある。 それは、以前のコラムでも書いたのだが、大規模な災害になればなるほど( 中越地震など)「首相直轄」の機関でなければ意味がないという事である。後 は、日本の苦手な分野である「民間・医療ボランティア(専門家じゃないとダ メ)」との融合が果たして、うまく行くのかが気に掛かるところである。 アメリカでは実は"DMAT"の上にもっと大きなシステムがある。その一部 に当たるのが"災害医療支援チーム(DMAT)"なのである。劣悪な環境下での医療 行為は「移動野戦外科病院」をお手本にしているとの事だ。 [そのシステムとは]・・・1984年に戦争及び災害によって、米国内に多く の負傷者が発生した時にどう対応するかという事を 目的に、国防省によって考案された 「NDMS(国家災害医療システム)」 N…National D…Disaster M…Medical S…System の事である。 "NDMS"は、大規模な災害が起きた場合のみ、「大統領の承認」によって のみ発動される。災害、戦争どちらの時に於いても、犠牲者は、全て軍の飛行 機で現場より放出されて、そして安全な地域に避難するようになっている。 『日本の「災害医療システム」の欠けている部分とは?』 アメリカでは、"NDMS"の主要な部分に「全米74ヶ所の大都市における 病院、医療関係者の統括」というものがある。各々の大都市は「自分達の所に 多くの患者が運ばれて来た時にどう対応するか?」という事を常日頃から考え ている。 すなわち、このシステムは「大都市同士の相互援助システム」という事が言 える。だから、"NDMS"というのは「全米規模での相互援助システム」なの である。 今回の日本版"DMAT"には、本当は一番必要である「各都市の相互援助シ ステム」という概念が抜け落ちているような気がする。前回のコラムで言えば、 いざ大災害の時に「本部機能(相互連携という意味から)」が働かない。 現場で、その他の医療施設でも、1チーム単位である医療スタッフ達をまと める「本部」が絶対に必要なのである。小規模な災害ならば、1チームごとの 指示で事足りるかもしれない。 しかし、より緊急性を要し、大勢のスタッフが激しく動いている大規模災害 では、そのやり方が、通用しないのである。 今でも、日本にはそれなりの「国家的な災害システム」があるのだろうが、 中越地震発生時、小泉首相の危機感のない態度(映画を見ていた)からすると、 上記の懸念は致し方ないのではなかろうかと思う。 「もし、米国を本当に手本にするならば "本部機能""相互援助"という点を再考して下さい」
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