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少しは前に進んだペット医療過誤裁判の事情 1999年12月ついにペットは「モノ」から「命ある存在」に法的に認められたので ある。26年ぶりに<動物保護および管理に関する法律>が名称を《動物愛護および管理に 関する法律(動物愛護)》に変えられ、モノ化していた法律に一服の涼風をもたらした。 正式に施行されたのは2000年12月。 これにより、ペットを殺された飼い主の気持ちが少しは世間的に認められた。しかし、 同時にこの法律では新たに飼い主の責任も派生している。 ペットにおける医療過誤で一番難しいのは、人間の場合と同様、「獣医」と「飼い主」 の関係である。 私も今年の一月に10年ほど飼っていたミルクという雑種犬を亡くしてしまった。本 当に北海道でも参ってしまうほどの酷い吹雪の日にその異変は突然やって来てしまった。 前日まで元気に飛び回って、散歩までしていた愛犬がその日は朝から歩けもしなかった のである。今までもそういうことが全くなかった訳ではなかったのでそのままにして出 勤した。 けれど、私の考えはこの時ばかりはチョッと甘かった。帰宅しても愛犬は元には戻って いなかった。それどころか、症状はもっと酷くなっていて、もう立てもしない状況までい っていた。私はタウンページを開き、往診してくれる獣医を探した。電話をすると1時間 ほどでその獣医は現れた。彼は「精密検査をしないとはっきり分からないが取り敢えず、 抗生物質とビタミン注射をしてみる」と処置してくれた。 1時間くらい様子を見る。しかし、期待に反して、ミルクの症状は改善されなかった。 もう一度、タウンページから、今度は「午後9時以降でも開いている動物病院」を探る。 その動物病院は存在した。そこは私が専門学校に勤めていた時に助手をしていた院長の I動物病院であった。 早速、猛吹雪の中、病院に辿り着いた。愛犬は殆ど虫の息であった。それでも応対し てくれた若いM獣医師はとても丁寧に今の状況を説明してくれた。かなり危機的な状況 である事、原因は何かはっきりしないが取り敢えず、点適等を施し、体力を回復しない と手術をするにしても耐えられない事など飼い主にとってはとても辛いことではあるが M獣医師は真摯に対応してくれた。これは専門学校であった時の院長からも感じていた。 私はペットの命はどんな状況であろうとも最後は「飼い主」が持つべきだと思ってい る。そのために獣医師も当然、説明責任があるだろうし、飼い主も聞く義務があると思 う。そういう信頼感が築ければ、医療過誤というのはなかなか起きないと私は考える。 人間でもペットの場合でも医療過誤が起きる時というのは何となく担当の医師とのそ れこそ「意思の疎通」にあることが多い。私の相棒のおふくろさんがガンで亡くなった 時も担当の若い医師が実に事務的な対応しかしてくれず、説明も不十分、話し合いにも ならなかったとの事であった。後から考えると医療過誤とは言い切れないが「抗がん剤 の投与の時期」などで合点の行かないところも多々あったみたいである。今となっては 証明のしようがないが・・・。 だから、ペットの飼い主は聞きたくない「死ぬかもしれない」という絶望的な説明で も獣医師からしっかり聞かなければならないのだ。 その後、愛犬は精密検査で『低血糖症』と診断された。しかし、手術を受けられるま では体力が回復せずに、M獣医師以下スタッフの手厚い看護の中、3日後にこの世を去っ た。私は個人的にはとても悲しかったが、最後に心のある良い動物病院、獣医師、スタ ッフに看取られて、良かったなとも同時に思った。 確かに下記のように法律が改正されて、「モノ」から「命ある存在」にペットは昇格 した。今後、ペットに関する医療過誤が法廷で認められれば、精神的な慰謝料の名目な どで賠償額は高騰して行くだろう。 だが、一番重要なのは「飼い主」と「獣医師」が余り感情的にならずにお互いの責任 を果たし、全うすることが『ペット』にとっては幸福なのではないだろうか。 《MEMO.007》動物愛護および管理に関する法律 第五章 罰則 第二十七条 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、一年以下の懲役又は百万円以 下の罰金に処する。 2 愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等の 虐待を行った者は、三十万円以下の罰金に処する。 3 愛護動物を遺棄した者は、三十万円以下の罰金に処する。 4 前三項において「愛護動物」とは、次の各号に揚げる動物をいう。 一 牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる 二 前号に揚げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫 類に属するもの
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